茄子と牛

徒然なるままに駄文を捨て書く

2022-01-01から1年間の記事一覧

プロペラ

数年前に他界した祖母は、戦争の話を嫌がった。 私が小学生の時、戦争について家族と話し合うという趣旨の宿題が出たことがあった。 純新無垢な子供は、「戦争に関するあなたの経験を語って欲しい」と頼まれた当事者の負担など、考えることもなかった。 祖母は…

Going to the moon

愛と情

私が「(彼氏のことを好きかどうかわからないけど、)情があるから別れられないんだよね」と零した時に、友人は桑田佳祐の作詞を引用した。 「「愛情」という言葉があるように、愛がなきゃ情は湧かないんだよ。だから、好きって感情は無いかもしれないけど、…

若いカップルが「超綺麗」と言って足を止めた。 男性はスマホを取り出して、写真を撮り始めた。 桜の美しさはその儚さにある、と人は言う。春の訪れを告げたと思えば、風と共に去っていく。その潔い去り際に、桜に対する美意識が確立された。 久方のひかりの…

駆け足

今日は、春をすっ飛ばして夏が来てしまったような陽気だ。 まだ順番待ちをきちんとできない子が、駆け足で遊具に向かっていくように、季節も自分の出番が待ちきれなくて、慌てて出てきてしまったようだ。 梅の花は盛りを迎えた。 桜はその蕾を開かんと力を貯…

午前4時は朝だろうか。夜だろうか。 たった4日間の連休を好き勝手に生きていたら、生活リズムが狂ってしまった。 何事も堕ちる時は一瞬なのに、戻そうとするには途方もない時間と労力を要するのだと、こうなる度に実感する。 社会の活動時間に合わせた生活を…

換気のために10cm程開けられた車窓 線路上を滑らかに走っていく電車に吹き込む風は、冬にしては暖かいと感じる柔らかな日差しと相まって、穏やかな夏のそれととてもよく似ていた